防犯コラム

☆防犯コラム☆

この「防犯コラム」では、地域で自主防犯活動に尽力されている方々に参考になり、また、若い方々にも防犯活動に関心を持ってもらえるように、地域防犯の光景を描きます。
今回のお話は、『目に訴え、心に届ける街頭防犯啓発キャンペーン』です。
街頭キャンペーン時の参考やヒントにしていただければと願っております。

第2回 目に訴え、心に届ける街頭防犯啓発キャンペーン

近年、個性的な活動を行う防犯ボランティア団体が増えてきました。個性的というのは、地域の問題に合った活動を、メンバーの好みや能力を活かして行っているという意味です。
最近は、そうした団体が活動内容の発表をし、各地の自主防犯の参考にしてもらうフォーラムが多く開催されています。そのなかでも最も規模が大きいのが、国の警察庁が毎年主催している「防犯ボランティアフォーラム」です。昨年度からは、まず全国6つのブロックで各都道府県の団体が発表をし、ついで各ブロックの代表が集うフォーラムが秋に開かれるようになりました。
7月20日、私は、近畿6府県の団体が発表するフォーラムに参加し、発表についてコメントをさせていただきました。そして、最低限でも地元大阪の団体の活動は直に見ておきたいという思いから、8月11日、今回発表をされた泉大津警察署管内防犯協議会直轄婦人部(SAF)さんの活動に参加させてもらいました。

11日というのは、大阪府ではひったくり防止デ―。SAFさんは、毎月11日に、スーパー前などの街頭でひったくり防止カバーの無料取り付けキャンペーンをしています。  
研究室の学生さんと一緒に私が伺った日は、猛暑でしたが、15人くらいのメンバーが揃いのピンクの法被を着て、スーパー前の駐輪場でキャンペーンを行っていました。ピンクの色もですが、背中の「ひったくり撲滅」の大きな歌舞伎文字が波に踊るデザインも、はっきりとした訴えを持っていて、いいなと思いました。
街頭キャンペーンは一瞬の勝負から始まります。逆の立場になって考えてみてください。たとえば駅の階段から出て、何かやっている。とっさに判断するのに使うのは目と耳。目に入るものには、ノボリや看板、着ぐるみがありますが、特にティッシュやうちわなどを配布するキャンペーンでは、配っている人の格好が一番目に入りやすい。そこで、ピンク地の白波に踊る「ひったくり撲滅」の歌舞伎文字を見れば、すぐに場の意味がわかります。

ティッシュなどの配布は数秒ですが、ひったくり防止カバーの取り付けの場合、少なくとも1から2分の時間をもらいます。ふつうは、無言で取り付けてあげて、「気をつけてくださいね」の一言で終わります。ところが、SAFさんによる取り付けは違いました。
「お財布を入れたバッグを確実に入れてほしいの」――この一言に私はとても感心しました。スーパーの駐輪場ですから、ひったくり防止カバーを取り付けた自転車のカゴに、買った物が入ったレジ袋やエコバッグを入れようとするのは当たり前。それを見て、SAFさんは、お金が入っているバッグを先に入れてもらったのです。
たしかに、家に着くまでの道中、お財布は取り出す可能性があって、ひったくり防止カバーの口のひもを締めて入れておくのは面倒くさい。でも、そうした隙をつかれて被害にあうのがひったくり。先の一言は、面倒くさいという気持ちも、犯罪にあう理屈も、ともにわかってないと出ない言葉です。私は、防犯対策のひと手間をかけてもらうには、相手へのこういった感情移入と説得力が必要だと思っています。

他方、SAFさんのキャンペーンでも、20から30歳代の女性はなかなか応じてくれない光景を見、メンバーの方も、「付けてくれるのは私たちと同じ世代やね」と言っておられました。
ひったくり防止カバーを若い人が付けてくれないのは、従来からある悩ましい問題です。以前、女性の学生さんが「ひったくり防止カバーはおばさんがするもの」という印象を話してくれたことがあります。近頃はかわいいデザインのカバーもたくさん提案されていますが、若い人が「かわいいなら付けようかな」と思うようになるには、もっと根本的なところを考える必要がありそうです。
そもそも、SAFさんなど防犯ボランティアの思いやりのある呼びかけが届くのは、「地元のおばちゃんたちが私らの安全を考えて勧めてくれている」という安心感を持てる人です。とすれば、地元の呼びかけで若い人がひったくり防止カバーをしてくれる地域とは、地元のおばちゃんたちの思いやりを若い人が感じられるまちなのだと思います。
一瞬の勝負から始まって、普段からのまちづくりも問う――理想的な街頭防犯啓発キャンペーンとは、目に訴え、心に届けるものなのでしょう。


寄稿者
摂南大学法学部准教授
中沼 丈晃 先生

昭和46年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程後、摂南大学学法学部講師を経て、平成19年より現職。専門は行政学、公共政策論。平成17年から地域防犯を研究し始め、寝屋川市・交野市・門真市などにおいて、地域の日常の活動や会合に積極的に参加する形で研究を進めている。
寝屋川市安全推進協議会(副会長・平成22年から24年)、堺市防犯カメラガイドライン策定検討懇話会(座長・平成23年)の委員を務める。

摂南大学法学部中沼研究室

平成14年から始まる。4回生と3回生が中心となって、まちづくりの研究や地域活動を行っている。現在は、防犯、自治会支援、小学校支援、児童福祉の4分野にわたって、現場での活動とそれに基づく研究を展開。特に防犯では、青パトによる子ども見守り活動を日々続けている。